南星中の関係者によると、昨年秋に登坂本人から教育実習の依頼があったという。当時、リオ五輪出場は、まだ決まっていなかった。登坂が希望する時期は五輪が終わった後の9月。同中では本来なら5、6月に教育実習生を受け入れているが、日程を調整して対応した。

 登坂は同中を卒業して以来、親元を離れて、愛知県の至学館高、至学館大と進んだため、「教育実習はぜひ故郷で」という思いが強かった。金メダル獲得を祝うパレードや祝勝会などが続く中で教案を作り、教育実習の準備を進めてきた。

 リオ五輪での金メダル獲得から約1カ月、あいさつ回りや祝勝イベントで忙しく、目まぐるしい日が続いている。生徒と給食を食べたり、休み時間におしゃべりしたりするのがひと息をつける時間なのかもしれない。“登坂先生”に教育実習の感想を聞いてみた。

「指導していると、力が入っちゃいます。『あと、少しでできそうだな』と思ったら、熱くなってしまう。後輩に教えるみたいにガンガン言い過ぎたと思って反省し、少し離れて見ていると、ちゃんとできるようになってくれたりもする。いつか指導者になるためのいい経験をさせてもらっていると思います」(登坂)

 30日に教育実習を終えた後は、レスリング漬けの日常が待っている。痛めた左脚の様子を見ながらではあるが、1日には名古屋市内で練習の予定だとか。二つ目の五輪金メダル獲得を目指し、2020年東京五輪への歩みが始まる。(ライター・若林朋子)