何より、前記通りにけが人が多かったチーム内で、開幕からローテーションを守ってきたことは特筆に値する。前田の存在がなければ、ドジャースが今の位置にいることは難しかったといっても大げさではあるまい。

「嬉しい誤算、若い力の台頭が多かったこともあって、今季のドジャースには良好なケミストリーが生まれている。それこそがメジャー最高の金満チームのひとつであるドジャースに足りないものだった。今年は上位進出の大きなチャンスがあるかもしれない」

 タワタリ氏はそう語り、前田、同じく新人王候補のコーリー・シーガーといった新戦力のおかげもあって、チーム内に良い空気が生まれていると指摘する。

 ドジャースは過去3年連続地区制覇を飾っているが、プレーオフでは2013年のリーグ優勝決定シリーズ進出が最高。過去2年は地区シリーズで敗退しており、勝負弱さが目立っている感は否めない。

 しかし、今年のドジャースは、9月9日に復帰したカーショー、トレード期限に獲得したリッチ・ヒル(今季12勝3敗、防御率1.80)、前田という上質な3本柱をここに来て確立させた。それぞれ耐久力に不安があるが、3人ともが健康を保てば、どのチームにとっても厄介な先発陣と言えよう。それに加え、今季のチームにはケミストリーが宿っているとすれば…?

 タイプ的に似ていると評された黒田は、前田にとっての古巣でもある広島カープのエースとして、チームを25年ぶりのセ・リーグ優勝に導いたばかり。そんなカープの成功に、“マエケン”もアメリカで続くことができるか。

 タワタリ氏は“過小評価”という言葉を使ったが、現時点での前田の知名度は確かにまだ全国区とは言えないかもしれない。しかし、今秋――。ドジャースにとって1988年以来となるワールドシリーズ進出に貢献するようなことがあれば、それはすぐに変わっていくはずである。(文・杉浦大介)