今季ここまでの大谷の打撃成績は、出場84試合で打率.332(256打数85安打)、20本塁打、53打点(8月31日現在)だが、これを単純計算で143試合に換算してみると打率.333(436打数145安打)、34本塁打、90打点という成績になる。さらにこれを8月末時点(120試合消化)で換算してリーグ内の個人ランキングの中に当てはめてみると、打率.330はリーグ2位(トップは打率.349)、29本塁打は同3位(トップは30本塁打)、76打点は同6位タイ(トップは91打点)。この数字を見る限り、打者としてもタイトル獲得は十分に可能。仮に野手に専念すれば打撃三冠王も手の届く距離にあることが分かる。

 現状、「投手・大谷」を諦めるはずがなく、本人も含めて誰も望んではいない。ただ、先発ローテーションとしてシーズンフル回転しながら野手として全試合に出場するのは、バーチャルな世界では可能だが、現実では体力的にほぼ不可能だろう。そして今季は8月末の時点で規定投球回、規定打席をともに下回っていることからも分かるように、二兎を追った代償として「無冠」に終わる可能性も大きくなる。「自分が二人いれば…」と、誰よりも大谷自身が思っていることだろう。

 それでも夢を捨てることはできない。これまですでに多くの者の想像を超えるパフォーマンスを見せてきた大谷だからこそ、期待は膨らむばかりだ。まずはコンディションを整えた上で、できるだけ多くの試合に出ること。ケガをしない肉体を含めた体力強化が条件となる。

 “二刀流”大谷翔平――。投手の能力に加え、打者としての実力も申し分ない。今季の打者としての成長が、将来の“投打6冠王”の足掛かりになるかも知れない。