強盗に狙われやすい場所はどこか。ファベーラと呼ばれるスラム街は当然のことながら、風光明媚な海外沿いも危ない場所のひとつだ。例えば、ビーチバレーやヨット、トライアスロンなどの会場で、観光名所としても知られる市南部のコパカバーナ地区は、会場やインフラ整備のための工事資材置き場やフェンスによって導線が複雑に入り組んでいる。場所によっては袋小路になっているため、強盗団はそこに観光客を追い込み金品を奪うケースが多発している。

 夫の赴任で2015年3月からリオデジャネイロで暮し、自身もかつて仕事でアテネ・北京五輪を経験しているアキさん(30代・仮名)は、市内でも比較的安全なイパネマの富裕層の居住エリアに住んでいる。イパネマの海岸沿いについても、工事現場は夕方になると人けがなくなるため近づかないようにしているとか。工期の遅れから五輪開幕後も工事が続く模様で、観光客も安易に近づかないほうが無難だという。

 移動手段の安全性も気になるところ。今大会の会場はマラカナン、コパカバーナ、バーハ、デオドロと大きく4つのエリアに分かれている。エリア間の移動には地下鉄やBRTと呼ばれる連結バスが整備されているが、開・閉会式が行われるメーンスタジアムのあるマラカナン地区を例に取ると、沿線にファベーラ(スラム街)が多く、乗り換え時に強盗に遭うリスクも……。

 在リオ日本国総領事館作成の「安全の手引き」によれば、公共交通機関よりもタクシーのほうが犯罪発生率は低いとされ、日本より料金も安価なため、近距離移動でもタクシー利用を推奨している。ただし、車内に写真付きの身分証を提示しているという条件付きだ。

「写真付きの身分証を掲示したタクシーならば、ぼったくりの心配もまずないでしょう。私も、住まいがあるコパカバーナ地区からオリンピック・パークがあるバーハ地区まで、子供を連れてタクシーで向かい、五輪観戦を楽しむ予定です」(前出のアキさん)

 五輪直前になると、過剰な現地情報は毎度のことだが、生活者の視点から見ても今回のリオ五輪ばかりは油断大敵である。(文・高樹ミナ)