大儀見優季(撮影・六川則夫)
大儀見優季(撮影・六川則夫)

 もったいない試合ではあったが、これが両国の実力差でもある。7月6日(日本時間)、カナダのバンクーバーで行われた女子W杯決勝は、米国が立ち上がりのセットプレーから2点を連取するなど終始、日本を圧倒。5-2の大差で下し、1999年以来3度目のW杯制覇を達成した。

 前回2011年のW杯、そして12年ロンドン五輪と国際舞台の決勝での対戦は3回目。お互いに相手の手の内は知り尽くしているはずだったが、米国は日本の弱点をよく研究していた。

 これまで日本が痛い目に遭ってきたのはモーガンのスピードとロイドの裏への飛び出し、そしてワンバックの高さだった。35歳のベテランとなったワンバックはベンチスタート。とはいえ、米国はフィジカルの強さとパワーを前面に押し出すスタイルのため、日本が空中戦を警戒したのは当然だった。

 しかし、そんな日本のアメリカ対策の裏をかき、3分の右CK、5分の右FKはいずれもグラウンダーのクロスで、ファーサイドから走り込んだロイドが確実に決めて2点を奪った。まさに電光石火の早業だ。さらに14分と16分には日本のパスミスにつけこんだカウンターからも2点を奪取して、さらにリードを広げた。

 日本のヨコパスにはプレスをかけつつも、無理して奪おうとはしない。しかし、タテに入って来たボールはインターセプトを狙う。日本もヨコパスだけでなく、どこかで勝負しなければならないが、アメリカの両サイドの守りは堅いため、大儀見のポストプレーを選択したくなる。それを読んでの攻撃でもあった。

 0-4となったことで日本は宮間をボランチに下げ、宇津木を左DFに回し、突破力のある鮫島を左MFに上げる。宮間が下がったことでパスが回り出した日本は、27分に川澄のクロスを大儀見が絶妙なトラップからマークを外して1点を返す。さらに、33分には岩清水に代え澤を投入(阪口をCBにコンバート)、39分は川澄に代え菅澤を起用して大儀見との2トップと、佐々木監督は前半のうちから攻撃的な選手交代を行った。

 日本に勢いが生まれるかと思ったのが52分の2点目だ。宮間のFKを澤と競ったジョンストンがオウンゴール。今大会6試合で1失点のGKソロが初めて2失点を許した。ところが、その2分後の54分、またもCKからヒースに5点目を決められ、突き放される。これで米国は余裕を取り戻してしまった。

 岩渕の投入(59分)や3DFにしての反撃も実らず、日本のW杯連覇という夢はライバル・米国に阻止され、ロンドン五輪に続き準優勝で終わった。とはいえ、大会前は決して下馬評の高くなかった日本が決勝まで進出したのは快挙と言っていい。組み合わせに恵まれたのは、グループリーグを勝ち上がればカナダと同じブロックに入ったからにすぎない。

 実際、日本が楽に勝った試合は1試合もなく、決勝以外はいずれも接戦だった。それだけ女子サッカーのレベルが上がっている証拠でもある。そうした中で、今大会は参加した全選手に実戦経験を積ませたことも大きい。次の目標は来夏のリオ五輪。そこで、米国に雪辱できるかどうか。まずはその前にアジア予選を突破しなければならないため、8月に中国・武漢で開催される東アジアカップは、格好の試金石となるはずだ。

(サッカージャーナリスト・六川亨)