街道をゆく第1巻 表紙※クリックすると特設ページに飛びます
街道をゆく第1巻 表紙
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 作家の司馬遼太郎が1971年から「週刊朝日」に四半世紀にわたり長期連載した紀行作品『街道をゆく』の電子書籍版第1弾が8月7日、朝日新聞出版から発売された。生誕91年にあたるこの日、文庫新装版全43巻を底本とする1~10巻の配信がKindleストア、楽天koboなど主要電子書店でスタート。2カ月ごとにほぼ10巻ずつ追加され、没後19年を迎える2015年2月に完結する予定だ。

 司馬作品の本格的な電子版は、歴史小説『竜馬がゆく』『燃えよ剣』(文藝春秋)に続く3シリーズ目となる。『街道をゆく』は、こうした人気小説の舞台を多数含む紀行集で、どの巻から読んでも楽しめるのが魅力だ。文庫版を片手に著者の足跡をたどるファンも絶えず、かねて電子化の要望が寄せられていた。

 待望の電子版では、旅や歴史小説と結びつけて作品をとことん楽しめるよう、工夫が凝らされている。

 朝日新聞出版が開設した特設サイト(http://publications.asahi.com/kaidou/)では、グーグルマップ上に各街道のルートが表示される。主要スポットには簡単な解説がつき、パソコンでなら沿道の風景を写した「ストリートビュー」も見られる。自宅にいながらにして街道を旅する気分が味わえるのだ。訪れたい地点を自分のグーグルマップに保存しておけば、旅先でスマートフォン(スマホ)などから利用できる。かつて地図と首っ引きで歩いたファンは、GPS機能付きの携帯端末が1台あれば、迷うことなく、ときには足を休めて電子版を読み返しながら、著者の足跡をたどることができるだろう。

 特設サイトには、著者の小説作品や登場人物から、『街道をゆく』の該当巻を検索する索引も掲載された。索引機能を強化した電子版「読書ガイド」も、Kindleストア限定で無料配信される。

 たとえば、大河ドラマで注目される黒田官兵衛(如水)をめぐる街道を歩くとしよう。特設サイトの人物名索引からは、7、9、17、34の計4巻が表示される。官兵衛を主人公とする司馬作品『播磨灘物語』で検索すると、9巻と34巻に絞られる。第1回配信分の9巻をクリックすると、『信州佐久平みち、潟のみち ほか』のページにとぶ。タイトルにはないが、9巻には「播州揖保川・室津みち」が収録されており、官兵衛が一時居城としていた山崎の地を、著者が1976年3月に訪れたことがわかる。旅の起点・伊和神社をストリートビューで見ると、鬱蒼とした杉林の中に作中にも登場する楼門がひっそりと佇んでいた。かつて山崎城があった山崎小学校までルート検索をすると、因幡街道を12.1キロ、徒歩2時間27分と表示された。もちろん、特設サイトからワンクリックで、電子版や文庫版の購入サイトにとぶこともできる。

 いよいよ旅行シーズン本番。スマホなどに『街道をゆく』電子版と地図を詰め込んで旅立てば、思わぬ発見が待っているかもしれない。