こうした効果のカギを握るのは、コーヒーに含まれる「カフェイン」ではなく、「クロロゲン酸」というポリフェノールの一種だという。

 カフェインには、20~200mg(コーヒー1杯分は約60mg)の摂取であれば、眠気覚まし効果や活力アップ、集中力・幸福感を高めるといった効果があるが、それ以上になると不安・不眠・眠気・頻脈等の中毒症状が出現する場合がある。

 また、カフェイン200mgを1日2回14日間継続摂取すると、活力が出るといったメリットは薄まり、中毒症状のみが感じられるようになるほか、カフェインを飲まないと24時間以内に頭痛・眠気・イライラ感等の「離脱症状」が起こることがあるという。(参考『総合診療 2019.2』医学書院)

 要するに、「コーヒーを飲むと目が覚める」というよりは、「コーヒーを飲まないと目が覚めなかったり、イライラしたりする」ようになり、不快感から逃れるためにより多くのコーヒーが飲みたくなるというわけだ。コーヒーで効果が得られなくなると、カフェイン製剤に頼る人も出てくる。こうなると、もう「依存症」なのだが、ほとんどの人は無自覚なように思う。

 実は筆者もコーヒーが大好きで、コーヒーを飲まないと1日が始まらない感じがあり、かつては普通に1日10杯飲んでいた。今は加齢のせいか、胸焼けするような気がするので、1日3杯に留めている。カフェインが体内で分解される際には、肝臓に負担がかかるという。メリットとデメリットのバランスは微妙だ。

 ちなみにカフェインのデメリットは、2015年に報道された20代男性のカフェイン中毒死をきっかけに注目されるようになった。ただ、男性が死亡したのはコーヒーの飲み過ぎではなく、カフェインの含有量が高いエナジードリンクの飲み過ぎによるもの。急性カフェイン中毒で緊急搬送される人の100%近くは、カフェイン製剤による中毒だという。

 だから決してコーヒーが悪いわけではないのだが、依存症の不安なく、肝機能の改善やがん予防効果といったメリットを享受するには、1日1杯程度にとどめておいたほうがいいような気がする。

 でも、研究報告は「3杯飲むといい」といっている、1杯では足りないみたいだ。

 それならカフェインを抜いたコーヒーならいいのか、というと、「カフェインを抜く過程で危険な化学薬品が使われている可能性がある」という話もある(日本ではこの薬品の使用は禁止されているため、日本製のカフェインレスは大丈夫)。

 コーヒー愛好家としては、難しい判断を迫られるのである。

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酒は百薬の長ではない