ワクワクした高揚感のまま次のゾーンに進めば、木々のシルエットが投影された空間に箱形のショーケースが無数に並ぶ「知の森」ゾーンが広がる。


「ここからがメインの稀覯本です。『ニュートン宇宙』『光』『飛行』など13のカテゴリーがあり、学生たちがストーリー性を意識して分類しました。古い本は装丁が美しいものが多いので、表紙も鑑賞できるようにショーケースは鏡を使って工夫しています。これも学生たちの作品なんですよ」

 なるほど。展示された書物はもちろん貴重なのだが、その演出にこそ建築学科の学生たちのセンスが生かされていることに気づいた。色分けや配置、立体的な展示方法まで、オブジェを鑑賞しているような感覚になる。

「金沢工業大には数々の貴重な本があり、それを学生が美しく展示する建築的技法を持っている。その両方を楽しんでもらえればと思います」

 宮下准教授の説明が具現化するのが、「知の繋がり」ゾーンだ。多様な学問領域が関連し合っていること、悠久の時間を超えてつながっていることが表現されている。まるで飛び出す“知の系譜”といった趣だ。

 本物、本当、本格……あらためて「本」の持つ偉大な力に圧倒される。残念ながらレプリカブック(複製本)以外は手に取って鑑賞することはできないが、知の探検者としてインスピレーションの旅に出かけるには格好の機会だ。

(文/杉澤誠記・アエラムック教育編集部)