続いて野村監督もベンチを飛び出し、「タイミングはアウトや。それはオレにもわかる。でも、足が離れるのが早いやないか」と理詰めで抗議した。

 だが、何を言っても小林塁審が聞く耳を持たないため、つい「このバカ!」と声を荒らげたのが命取り。現役時代も含めて通算4361試合目で初の退場を宣告されてしまった。

 同年は7月16日の巨人戦で、坪井智哉がガルベスから死球を受けると、「故意死球は許されるのか」と息巻き、同18日の巨人戦でも、メイの一塁ベースカバーのセーフ判定をめぐって「(疑惑の判定は)巨人戦に多いな」と批判するなど、審判との対立がエスカレート。これらの言動が伏線になっていた感も否めない。

「まあ、いずれやられるとは思っていたよ。あいつはなぜかオレに対しては、ムキになりよる。反野村のキャプテンや」とボヤきつつ退場した野村監督だったが、せっかくの先制機も無得点に終わり、その裏、2点を先行される悪い流れに。

 だが、まさかの人生初退場劇がナインの闘志を呼び覚まし、阪神は同点の7回に2点を勝ち越し、7対6で逃げ切り。7月下旬から続いていた連敗も「9」でストップし、「よう勝ってくれた」と一転大喜びのノムさんだった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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