「この戦争で一体どれだけの命が奪われただろうか。病院では、爆撃の被害に遭った男性が声も出ないのに「ありがとう」と唇を動かした。私の手を握りしめ『見てくれ、日本に伝えてくれ』と家族の死を涙ながらに訴えたイラクの人たちの声が耳から離れない。どうしても忘れることのできない悲しい出会いばかりだった」
戦渦に生きる人がいることを無関係だと切り捨てるのではなく、知ってもらうこと。それが日本の安全にもつながると山本さんは信じている。
山本さんの墓碑にはこんな言葉が刻まれている。
「私たちは、ジャーナリストが、何人殺されようと残った誰かが記録して、必ず世界に伝える。すべてのジャーナリストの口を塞ぐことはできない。どんな強大な力をもった存在であっても、きっと誰かが立ち向かっていくだろう」
(AERA dot. 編集部・福井しほ)