ヴィッセル神戸のイニエスタ (c)朝日新聞社
ヴィッセル神戸のイニエスタ (c)朝日新聞社
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 一時帰国していたスペイン代表MFアンドレス・イニエスタが戻り、迎えた8月11日のヴィッセル神戸対ジュビロ磐田戦。6月末に左足負傷で長期離脱を強いられていた元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキも復帰し、世界トップレベルの2人の共演がついに実現した。

 彼らはノエビアスタジアム神戸に集まった2万4731人という超満員の大観衆をいきなりくぎ付けにする。開始早々の15分、ポドルスキの左足から繰り出された強く速く正確なタテパスにイニエスタが反応。反転しながらマークに来たDF大井健太郎をかわし、さらにGKカミンスキーまでも抜き去って右足を一閃。華麗なJリーグ初ゴールを決めたのだ。まさに世界基準の技術と戦術眼が凝縮された一撃に、見る者の全てが度肝を抜かれた。

「素晴らしいパスを受けて、いいゴールを決められた。それをホームスタジアムでできた。ホントに喜んでいます。ルーカスのようなレベルの選手と分かりあうのはある意味、簡単なこと。さらにいい結果を残していきたい」とイニエスタが満足そうに言えば、ポドルスキも「彼がすごくいいところにランニングしていたので、ホントに出すだけだった。今日みたいなゴールシーンは誰もができるわけではない」とパートナーを絶賛した。

 これまで神戸にはミカエル・ラウドルップ(元デンマーク代表FW)やイルハン・マンスズ(元トルコ代表FW)など世界的スターが何人か加わったが、環境適応やケガの問題で力を発揮できずにチームを去っている。

 しかし、今回はワールドカップ優勝経験者が2人同時に在籍するというサプライズが実現した。イニエスタが言うように、世界基準を知る者同士であれば、お互いに感覚を合わせやすい。ボールが来ずに孤立したり、自分の出したところに味方が動いてくれなくて苛立ったりすることもない。相乗効果は非常に大きいのだ。

 実際、この日も2人のパス交換から何度もチャンスが作り出された。ハンドと判定されて幻のゴールになった前半25分の場面などはその象徴だ。イニエスタの巧みな足技から右に走ったポドルスキにパスが渡り、その折り返しを新加入FW古橋亨梧が詰める形だった。2人の動きに呼応しながら古橋やMF郷家友太、FWウェリントンら攻撃陣が連動して動こうという意図がよく表れて、前半は磐田を圧倒した。後半こそやや押し込まれたが、2-1という最終スコアでは物足りないくらいの好ゲームを神戸は見せてくれた。

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日本人選手たちの成長スピードも上がる