今日のような報道により、残虐な犯罪が繰り返し報道されて、国民の多くは死刑当然という考え方につながると思います。そうではなく、いわゆる「知的エリート」たちが入信して犯罪に手を染めるようになったことも含めて、死刑確定囚からの直の話が社会に還元するものもあったのではないかと思います。いずれにせよ彼らがなぜ犯罪を起こしたのか、社会的な解明はまだ不十分です。
以前、ノルウェーの犯罪学者が「犯罪者として生まれる人間はいない。犯罪者になっていく。犯罪者をつくるのは社会である。犯した罪に応じて処罰する応報刑ではなく、教育を社会的に再包摂することに刑の意味がある」と話していました。あらためて日本社会全体が考えるべきではないかと思います。
欧州諸国など死刑を廃止している国のほうが、犯罪被害者に対して手厚い補償ができている。一見、死刑を廃止しているから被害者がおきざりになっているように見受けられますが、実はそうでもないのです。日本は、死刑制度があるけれど犯罪被害者には十分な対応ができていないのが現状ではないでしょうか。
◯宇都宮健児/うつのみや・けんじ
弁護士。元日本弁護士連合会会長。教団側から被害者への賠償を進めるために弁護士らが設立した「オウム真理教犯罪被害者支援機構」理事長
(AERAdot.編集部/井上和典)