グレーバーの展開する議論に、ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズなどが紙面で賛辞を送り、『負債論』は世界各国でベストセラーになった。日本でも話題になった『21世紀の資本』のトマ・ピケティも「I Love Debt」(負債論、愛しています)とのコメントを寄せている。

 グレーバーは、「借金は返さなければならない」というモラルを疑うことを本の中で訴えている。本田自身もこれまで人々の常識を覆してきたが、この過激な思想書を「お気に入りの本」と評価したのも、同じく常識破りの考えを持つグレーバーが、歴史的事実の緻密な積み上げで一つの思想として実らせたことにあるのかもしれない。前出の版元編集者は「大きな本ですが、実際に手に取ってじっくりと読み解いてほしい」と話している。(AERA dot.編集部・西岡千史)

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