●アジサイ寺の始まりは鎌倉から
西洋アジサイが日本に上陸以来、全国各地で植樹されてはいたが、「アジサイ寺」の名が世に初めて登場するのは昭和中期で、鎌倉の明月院ではないかと言われている。アジサイが観賞用として人気を得てからの歴史はかなり短いのである。
今では、明月院に代表される鎌倉一帯はアジサイの名所となった。明月院の他にも、長谷寺、成就院、東慶寺、円覚寺などアジサイ寺の名は挙げればキリがない。
●東京の観賞スポット
全国的に見ても、石川県の本興寺、奈良の長谷寺や矢田寺、宇治の三室戸寺、大阪・四天王寺、千葉の本土寺、埼玉にも能護寺や金泉寺といった有名どころが点在している。
さて、東京はと言えば、何を置いても白山神社のアジサイ山だろう。明日17日までは「あじさいまつり」が行われ、神社裏のアジサイが咲き乱れる富士塚が公開されている。また、日野市の高幡不動尊(金剛寺)は7500株ものアジサイが参拝者を出迎えてくれる名所で、7月7日まで「あじさいまつり」が行われている。
ところで、われわれは「紫陽花」をアジサイだと思っているが、紫陽花という漢字を最初に用いた唐の詩人・白居易は、別の花を表すために当てたものだったらしい。「紫陽花=アジサイ」は日本だけで通じる当て字である。そういえば、江戸時代に日本で活躍したドイツ人医師・シーボルトは、アジサイに自分の妻・おたきの名をもじった「otaksa」と命名したとか。長崎には「おたくさ」を冠したアジサイまつりやお菓子などもあるほど知られた名である。
この花の名がなぜアジサイと呼ばれているか、青く小さいものが集まった状態(「あぢ=集まる」+「藍」)ではないかと考えられているが、はっきりした由来は分かっていない。「移り気」や「無常」といった花言葉を持つ、アジサイらしい歴史である。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)