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世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。取材やインタビューの基本は英語、それもブロークン・イングリッシュである。それゆえ、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやりとりも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした"ありえない英会話"を紹介する本連載、今回はあったら怖い麻薬のトラブルに対処する方法を紹介する。
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インドの路地を歩いていたら「ガンジャ」と言われた。ワイキキのビーチを夕方歩いていたらホームレスみたいな人から「ハッパ、ハッパ」と声をかけられた。そんな海外旅行者の体験談を耳にしたことはないだろうか。
これらのかけ声の正体は「マリファナ」を売りつけようとしている人たちだ。現在、アメリカの一部の州やほかの国では個人使用を認めるところも出てきている。これはあくまでその国の国民だけである。海外旅行で訪れた日本人が買ったり、使ったりしたらもちろん違法である。
「外国では日本人もマリファナOK」
などと、誤解されるところもあるが、日本人は外国でも日本の法律が適用される(もちろん、渡航先の法律も適用されるので、現地で違法なことは違法)。捕まってしまえば厳罰に処されてしまうのだ。
海外であってもドラッグに分類されるようなものには接点を持たないほうがいい!というのがセオリーである。それでも冒頭のように押し売りされたらどうするのかという不安もあるだろう。そこで、売りつけられた時にどのように対処するのが、トラブル回避にもっとも有効なのか。私が実際に使っているいくつかのパターンを紹介しよう。
まず、断り方で日本人がよく使うし、私もよく耳にすることがあるのが、
「I don’t have money.」(お金がない)
であるが、これはあまりよくない。お金がないだけで、興味がないわけじゃないと判断される。なんなら、「If you have a little money, you can buy it.」(手持ちの金でいいよ)と、強引に売りつけられたり、「I can go to your hotel with you.」(ホテルまで行こうか?)と後をつけられたり、余計面倒なことになりかねない。
私がよく使うのがこれである。
「I already have it.」(もう持ってる)
すでに持っている人に売りつけても仕方ないので、大抵はあきらめる。なかには、別のタイミングで出会ったら買ってくれるかもしれないと思って「How much did you buy it?」(いくらで買った?)、「It is better than you.」(こっちのほうがいい)と食い下がってくるヤツもいる。
強引に迫られたりして、強めに断りたい時には、
「I don’t need it.」(いらない)
そう言い切ることだ。もし、気がひけるのであれば「No, thank you/」(結構です)と付け加えておくのがいいだろう。もしくは、最初から「No, thank you.」だけでも十分である。
これらはかなり丁寧に対応したもので、私がもっとも有効かつ、多用するのが
「……」(無言)
無視するのである。ただし、ここでは言葉はないものの態度としては毅然としなければならない。相手は言葉だけを聞いて判断しているわけじゃない。むしろプロの売人であればあるほど、「こいつ、買うやつか?」と相手の動向を観察しているものなのだ。
ただし、あまり強すぎる態度や、そこに余計な言葉を出すと、相手もキレてしまうこともある。そのため、無言かつしっかりした足取りでその場を立ち去るのがいい。それ以上追いかけてくるようなら、それこそ大声で助けを求めるか、警察に駆け込むのがいい。どこの国でも非常事態にとれる対処は同じなのである。
(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)