佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
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「人を好きになる」という感情は、案外あやふやで、心もとないものかもしれない(※写真はイメージ)
「人を好きになる」という感情は、案外あやふやで、心もとないものかもしれない(※写真はイメージ)

 個性派俳優、佐藤二朗さんによる「AERA dot.」の新連載「こんな大人でも大丈夫?」。日々の仕事や生活の中で感じているジローイズムをお届けします。

*  *  *

 僕の妻は「耳掘り」が好きだ。

 耳を掘らせると大概の機嫌は直る。わりと深刻な夫婦喧嘩をしたとしても、「耳、掘っていいよ」と言うと、パッと顔が明るくなる。非常に安上がりだ。

 あまりに嬉しそうに僕の耳を掘るものだから、一度恐る恐る妻に聞いてみたことがある。

「ねえ、俺と結婚したの? それとも俺の耳と結婚したの?」

「耳」

 即答だった。

 先端が光る最新式(?)の耳堀り棒や、太さの異なる何種類もの綿棒などを駆使し、僕の耳を嬉々として掘りながら、「あ~あ、君の耳が5つくらいあったらいいのに」と無茶なことを言う。とにかく僕の妻は、僕の耳が好きらしい。ことによると、僕よりも僕の耳が好きらしい。まぁいい。まぁいいではない。いくない。全然いくない。耳に負けてどうする。俺の耳に俺が負けてどうする。とはいえ、俺の耳は俺のものであるから、まぁいっかという気持ちにならないでもない。

 先日、現在公開中の映画「50回目のファーストキス」の取材を受けた。恋愛作品ということもあり、映画の公式ツイッターで「佐藤二朗の恋愛相談室」と題して悩みや相談を一般から募集し、僕がそれに答えるという企画があった。完全に相談する相手を間違えてるだろと思いながらも悩みを聞いてみた。

「妻子ある男性を好きになってしまいました。どうしたらいいでしょう?」
「あきらめなさい」

「好きな男性がいます。彼が私のことをどう思ってるのか、イマイチ分かりません。どうしたらいいでしょう?」
「彼に聞きなさい」

「ムロツヨシさんのことを好きになってしまいました。どうしたらいいでしょう?」
「ムロに言え」

 などなど、身も蓋もない答えも何度かしてしまったが、20年以上も恋愛から遠ざかってるオッサンなりに、真剣に、悩みや相談に答えた。

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