だからといって、線路に逃げるようなまねをしたところで何の解決にもならない。われわれはどう対処すべきか。この問題について、元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平さんに聞いた。ここからは小川さんの見解を紹介する。

■「写真愛好家」と「盗撮犯」の違い

小川泰平:写真愛好家のなかには、自分が盗撮犯と間違われるのではないかと不安に思っている人もいるでしょう。

 でも、写真愛好家と盗撮犯は明らかに違うんです。まず、盗撮犯の多くは、スマートフォンを使います。無音の動画モードで撮影するケースが多いですね。望遠レンズをつけた一眼レフで、川の対岸に座る女子高生の下着を狙ったり、赤外線カメラを持って海水浴場をうろうろしたりする人もいますが、これは特殊なケース。たまに靴やカバンに小型カメラを仕込むケースもあります。

 一方、写真愛好家は主に一眼レフを使いますから、盗撮犯とは使用機材が異なります。大きくて目立つ一眼レフが盗撮に不向きなのは明らかです。

 盗撮犯の行動は基本的にこそこそしており、女性のスカートの中を狙うために背後から近づいていく特徴があります。犯行現場になりやすいのはエスカレーター。とりわけ距離が長く、角度が急な所は特に狙われやすい。そういう場所には刑事が張り込んでいて、よく盗撮犯を捕まえています。いわば“ドル箱”のような場所ですから(笑)。

 書店で立ち読み中の女性も狙われやすいですね。それほど動かないので盗撮犯は撮影しやすい。そこで小型カメラなどで背後から狙うわけです。

 確かに迷惑防止条例では、盗撮目的でカメラを差し向けただけでも違反になるとされていますが、実際の現場では撮影したことを確認してからでないと検挙しません。「スマホを持って歩いちゃダメなんですか?」「少しよろけただけです」などと否認され、立証が難しくなるリスクがありますから。

 ちなみに下着が写っていなければセーフということもないです。下着が写っていようがいまいが盗撮には違いありません。実際、過去に北海道で、衣服の上から盗撮しても条例違反になるという判決が出ています(注)。

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