肌の露出が増える季節には、撮影愛好家、とりわけ街のスナップ好きには気をつけてほしいことがある。実はこの数年、全国の都道府県で迷惑防止条例が続々と改正され、「カメラを向けただけで条例違反」と疑われかねない事態になりつつあるのだ。われわれはどう対処すべきか。アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』では、「盗撮冤罪」について取材。ここでは「盗撮冤罪」の概要と元刑事の「見解」を紹介する。
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電車内で痴漢の嫌疑をかけられた人がホームから飛び降り、線路を逃走するという事例が相次いでいる。その途中、電車にはねられて命を落とすという悲惨な事故も起きた。
そこまでして逃げるのはなぜか?
確かに実際に痴漢に及んでいたのかもしれない。だが、何もしていないのに逃げた可能性だってある。数々の冤罪事件を見てもわかるだろう。捜査当局に疑いをかけられたが最後、警察や司法機関、社会から不当な処遇や処分を受け、社会的制裁を受けてしまう「痴漢冤罪」の当事者になる恐れがあるからだ。
誤解はほんの些細なトラブルから始まる。満員電車の中で、実際には女性の体に触れていないのに、「この人に触られた」と騒がれてしまうと、なかなか収拾がつかない。
同じように、写真撮影の現場でも、「盗撮冤罪」の危険が高まりつつある。
ここ最近、各都道府県で迷惑防止条例の改正が相次ぎ、インターネット上を中心に議論が巻き起こっている。注目されたのが滋賀県の事例。滋賀県警が2016年6月末に出した迷惑防止条例の改正案に盗撮行為とつきまといの規制強化が盛り込まれた。
それまで盗撮行為の規制場所は<公共の場所><公共の乗り物>だったが、条例改正で<特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所>に拡充。また、盗撮の意思があっても下着等の映像が撮影されていなかった場合は規制の対象にならなかったが、改正後はカメラなどを<設置>または<人に向ける>行為も取り締まりの対象になったのだ。