大型補強としてマリナーズが獲得しながら不発に終わり、放出後に別のチームで復活を遂げた選手もいる。中でも印象深いのはエイドリアン・ベルトレ内野手だ。2004年にドジャースで200安打、48本塁打を放つなどメジャー屈指の強打の三塁手だったベルトレはそのオフに5年6400万ドルでマリナーズと契約。ところがその5年間は一度も打率3割、30本塁打に到達せず、契約最終年は111試合の出場でわずか8本塁打に終わるなど、高額年俸に見合った活躍はできなかった。

 ところがベルトレは2010年にレッドソックスへ移籍したとたんに打率.321、28本塁打、102打点と復活。翌11年からはレンジャーズでプレーし、昨年までの7年間で30本塁打以上を4回、打率3割以上を5回マークするなど安定感のある活躍を披露。2017年には通算3000安打を達成したのだった。

 近年でも、2015年途中に長打力不足を補うべく獲得したマーク・トランボ外野手の不発が記憶に新しいところ。マリナーズでは96試合の出場で13本塁打と期待にこたえられなかったトランボをマリナーズは早々に見限り、そのオフにオリオールズへトレード。するとトランボは47ホーマーを放って初タイトルを獲得し、マリナーズファンのフロントへの不信感を増幅させるのにひと役買っている。

 マリナーズからオリオールズへの移籍で開花といえば、アダム・ジョーンズもそのパターン。彼がメジャーデビューした2006年当時のマリナーズ外野陣はイチローやラウル・イバネスら不動のレギュラーがいたため割って入るのは難しく、2008年2月にフロントはオリオールズのエース左腕エリク・ベダード獲得のために1対4のトレード要員のひとりとして放出に踏み切った。もともとポテンシャルは高く評価されていたジョーンズはすぐにレギュラーへ定着して才能開花。昨季までのオリオールズでの10年間で打率.279、248本塁打、803打点をマークし、オールスターに5回、ゴールドグラブ賞に4回選出される名外野手となった。

 ちなみにこのトレードでマリナーズは2006年のドラフト2巡指名だった右腕クリス・ティルマンもオリオールズへ放出。2009年にメジャーデビューしたティルマンは後に頭角を現し、2013年から16勝2回を含む4年連続2ケタ勝利とエース級にまで成長した。その一方でベダードはマリナーズでの4年間で故障によるシーズン全休という不運もあったものの15勝しか挙げられず、近年では際立ったトレード失敗例として球団史に刻まれている。

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日本でプレーする選手にも“元マリナーズ”