ヤンキースの本拠地ヤンキー・スタジアム (c)朝日新聞社
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 ヤンキースが好調に勝ち続けている。4月20日時点では9勝9敗だったが、その後は28戦中22勝。開幕ダッシュに成功した宿敵レッドソックスを一時は追い抜き、5月24日時点で首位レッドソックスから1.5ゲーム差の2位につけている。特筆すべきは、昨今のヤンキースは多くの若手選手を起用しながら勝ち続けていることだ。

 現在のチームの根幹になっている26歳のアーロン・ジャッジ、25歳のゲーリー・サンチェス、24歳のルイス・セベリーノはヤンキースのマイナー組織で育った“ホームグロウン・プレイヤー”。開幕直後には21歳のグレイバー・トーリス(21歳)、ミゲール・アンドゥハー(23歳)といった新鋭も頭角を現してきた。その他、故障に苦しんできたクリント・フレイジャー(23歳)、グレッグ・バード(25歳)もそろそろメジャーで力を発揮しそうだ。

 もちろん若手ばかりで賄っているというわけではなく、今オフには昨季ナ・リーグMVPを受賞したジアンカルロ・スタントンをマーリンズからトレードで獲得。CC・サバシア、アロルディス・チャップマンといったベテランもチーム内で重要な役割を担っている。ただ、たとえそうだとしても、原型のチームにはフレッシュな魅力があることは誰も否定できないはずだ。

 隔世の感がある。かつてのヤンキースは豊富な資金にものを言わせてベテランを次々と獲得し、“悪の帝国”などと呼ばれたもの。給料総額でメジャー7位にすぎない今季のチーム作りは、これまでとは一線を画している。ヤンキースの方向性が大きく変わったのは2016年夏のことだ。この年のトレード期限前に、チャップマン、アンドリュー・ミラー、カルロス・ベルトラン、イバン・ノバらの主力を次々と放出。ここで優勝を諦め、“チーム解体”と呼んでも大げさではない大掛かりなファイヤーセールを敢行したのだった。

 ベテランの見返りとしてトーレス、フレイジャーをはじめとする多くのプロスペクトを獲得。同時にサンチェス、ジャッジらをメジャー登用して近未来に準備し、彼らが芽を出したことが現在の強さの伏線になっている。

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