そんな私の魂の鎮痛剤は、猫と酒と、本と映画。家で猫を傍らに引き寄せ、酒を飲みながら目から取り入れる一冊の本や一本の映画がどれだけ救いとなり、私の人生を再生に導いてくれたか!それはこの3年間、絶え間なく訪れた福音のようなものだった。
たとえば、白川を失くして間もなく出版された、中村うさぎさんの『他者という病』では、原因不明の大病をして3度死にかけ、仕事も失ってもなお「死ねなかった」うさぎさんの戦いに「自分だけが悲劇のヒロインではない」ことを教えてもらい、その1年後オランダのトーン・テレヘン氏の著作『ハリネズミの願い』(長山さき訳)に出会い、自分のハリが大嫌いで友だちのいない臆病なハリネズミが「でも誰も来なくてだいじょうぶです」という招待状を出さずに「もし誰かが来たら」という妄想でつづる物語が五臓六腑に染み入った。せつなさと可愛らしさ、孤独と人恋しさに満ちた優しくて哲学的な寓話にキュンキュンしながら、わたしにも、ハリネズミのようなコミュ障の部分があることを改めて自覚し、自らの「ハリ」のようなコンプレックスと向き合いながら、魂レベルで再び誰かとかかわって気持ちの上で溶け合いたい、という思いがふつふつとわきあがった。
そう、耐えられない喪失感の中でも、もう一度恋をしたい!誰かを強く愛したい!このままでは死ねない!と、この本によって再び思えたのだ。なんという、物語の力!!