「球数に関しては、シーズンに入ってから試合の中で増やせていけたらと思っていたんです。今日もそこまでボールはいっていない中、捕手の大野(奨太)君が苦労したんじゃないですか? 状態が良くない中で最低限の長いイニングを投げられたのは評価していいのか、どうか……」
敗戦後に、手放しで喜んだりはしない。それが、先発投手としてのプライドでもある。つかんだ手応えは、ぐっと胸の奥にしまいこんだ。自分だけが分かっていればいいことだ。
よし、やれる--。
松坂本人だけでなく、周囲もそう判断したからこそ、3度目の先発マウンドへの“権利”が与えられたのだ。
「そこに合わせて(体調を)作っていくだけです」
ありきたりの、陳腐な言葉なのは承知の上で最後にこう記そう。
いよいよ「3度目の正直」だ。(文・喜瀬雅則)
●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。