そうした状況の中で、いかにして、地域のプロスポーツが生き残っていくのか。その切実な課題は、近い将来に、待ったなしで迫ってくる。

 高知は四国IL4球団の中で、最初に単年度黒字化を果たした球団で、2014年から4期連続黒字決算も達成している。独立リーグ球団は、年1億円の予算規模。その中で「バー経営」という新規事業の規模を、100万円前後と概算しても、その1%。決して小さな割合ではない。

 開店から、約1カ月。梶田球団社長によると「赤字ではないですが、今のところはとんとん」と順調な出足だという。

 高知球団の北古味鈴太郎オーナーも「球場から繁華街へリアルに人が流れていく、そうした“ライン”ができたらいいなと。そのためには、球団直営の形がいいかなと思ったんです」と語る。

 球場で生まれた熱気や活気を、そのまま“夜の街”へとつなげていく。それが、沈滞化しつつある地方の経済を活性化することにもつながる。球団という公共財には、そうした起爆剤になるだけの力を秘めているのは間違いない。

 高知はこれまでも、地元の農業高校から子牛を購入して育て、肉として販売したり、農業事業部を作って選手に農作業をしてもらい、作った作物を県内で販売したりと、ユニークな事業を展開し、その成果を上げてきた。

 地域にしっかりと根を下ろし、地域の人たちとともに、地域で生き続けていく。球団は、その“シンボル”として、かけがえのない存在になっていかなければならない。

 そうしたコンセプトを踏まえて考えれば、監督自らがマスターとなるバーを、球団が経営することに、なんら不思議な点はない。

 むしろ、こうしたアイディアこそが、これからの地域のプロスポーツの経営においては、必要不可欠な要素になってくるのかもしれない。

 だから、駒田監督は“二刀流”もいとわないのだ。(文・喜瀬雅則)

【KOMA'S HOUSE】
高知市帯屋町1丁目10―20 浜田ビル3F
営業時間 午後8時から午前0時 不定休

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。