日本代表監督への就任が決定した西野朗氏(写真・Getty images)
日本代表監督への就任が決定した西野朗氏(写真・Getty images)
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 日本代表は異国から来た指揮官のもとで、厳しいところを乗り越えて成長するチャンスを放棄してしまったと言わざるをえない。W杯まで2カ月に迫った状況での監督解任という衝撃は世界的にも驚きをもって報じられており、人事に対するネガティブな受け止め方が大勢を占めている。

 確かに、チーム内で起こったと言われる監督と選手間の“摩擦”や予選後の試合での低調なパフォーマンスといった問題は日本の記者や評論家、サポーターの方が詳しく、“当事者”として危機意識が高いのは当然だろう。ただ、今回の解任について「選手やスタッフとの摩擦は少なからずあるものだが、今回は(度を)超してしまった」と語る田嶋幸三会長に選手やスタッフからどのように窮状が伝えられたかは分からない。

 ただ、その内容がどうであれ本大会に向かっていく中で、もがき苦しみながらチームとして成長するチャンスを自分たちから放棄してしまったことは確かだろう。“縦に速いサッカー”や“デュエル”といったものは本大会でもベースにはなるが、3カ国の分析と対策はここからチームに仕込んでいくわけで、選手がどう生かされるかも結局はその中で変わっていくものだ。

 マリ戦の時点ではテストをされているという意識が強すぎるせいか監督の要求と選手自身の判断のところで迷いが生じ、消極的なプレーが見られたことも確かだが、本大会の最終メンバーが固まってくればそうした部分は無くなっていくし、まずはコロンビア戦で結果を出すためにチームが集中する方向には行っただろう。

 もちろんチームは生き物なので、監督と選手の摩擦が究極的なところまで高まれば2010年のフランスの様に合宿中に空中分解が起こることも無くはない。

 しかし、その前段階で起きている摩擦をすべてネガティブな方に捉え、監督交代という形で解決させてしまえば、問題を乗り越えて成長する機会も奪われてしまう。それは選手の“ぬるま湯体質”を助長してしまうことにもつながりかねない。

 外から楽な環境を与えるような形で、監督が代わることでチームの雰囲気が多少よくなったからと言ってW杯で好成績を残す可能性が上がるわけではないし、むしろ下がるかもしれない。

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監督交代で好転の可能性は?