サバ州ではサバ州立鉄道に乗った。東南アジアの全鉄道を制覇する──という旅を続けている。ボルネオ島には、コタキナバルからテノムという街を結ぶ列車が走っている。正確にいうと本線とジョージ線に分かれているが、その距離を合わせると150キロほどになる。

 しかし切ない列車だった。車体は老朽化し、冷房も効いていない。線路もひどかった。とくにジョージ線は横揺れが激しく、座っていてもどこかにつかまらないと体が飛び出しそうだった。

 半島にはマレーシアの鉄道が列車を走らせている。日本人の間ではマレー鉄道として知られている。マレー鉄道の経営も厳しいが、車内はぎんぎんに冷房が効き、新しい車両も導入されている。マレー鉄道とサバ州立鉄道には30年以上の時代差があるように映る。

「サバの鉄道は金がないからね。サバ州だけではもう無理なんだよ」

 壊れた列車のドアを直しながら、職員はそういって笑った。

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