ヒアリが入り込まないよう、ひび割れにアスファルトを流し込む作業員=昨年7月、神戸市中央区 (c)朝日新聞社
ヒアリが入り込まないよう、ひび割れにアスファルトを流し込む作業員=昨年7月、神戸市中央区 (c)朝日新聞社
ヒアリの特徴 (c)朝日新聞社
ヒアリの特徴 (c)朝日新聞社

 例年以上に寒かった冬が終わり、4月に入って春らしい陽気が続いている。茨城県大子町では3日、関東地方で今年初めてとなる25度以上の夏日を記録。春を飛び越え、一気に初夏のような一日となった。

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 厳しい冬の終わりを喜んでいるのは、昨年、日本中を騒がせたあの生き物も同じだろう。南米原産で、強い毒を持つ「ヒアリ」だ。6月に兵庫県尼崎市で日本国内で初めて存在が確認されると、またたく間に愛知、大阪、東京などで発見が相次いだ。

 ヒアリは、刺されると火傷のような強烈な痛みがあることから、英語名で「fire ant」、漢字で「火蟻」と名付けられた。刺されたことで人間が死ぬことはまれだが、攻撃的な習性から、発見当初はメディアでは「殺人アリ」とも呼ばれた。

 これまでに数千匹のヒアリが見つかっている。ただ、ヒアリは寒さに弱いため、昨年11月22日を最後に日本国内では確認されていない。また、発見されたのも輸送船が運んだコンテナの中や港近くの地面だけで、すべて駆除された。いわゆる「水際作戦」が成功し、ヒアリの日本定着は寸前のところで防がれた形だ。

 では、ヒアリは日本国内から完全に消えたのかというと、決してそうではない。環境省の外来生物対策室の担当者はこう話す。

「昨年12月以降は国内でヒアリの存在は確認されていませんが、冬は活動量が少なくなるので見つかっていないだけで、国内で生き延びた可能性も否定できません。また、夏が近づいてきたことで、今年も海外から日本に上陸する可能性は高い。そのことを前提に対策をしています」

 ヒアリ騒動はまだ収束していなかった。それもそのはず、昨年日本で発見されたヒアリは、すべて中国の船に載せられたコンテナに潜み、上陸したと考えられているからだ。中国南部では、すでにヒアリが定着している。環境省も、再度の侵入を警戒し、中国との定期的なコンテナ航路がある68の港湾すべてで、現在もモニタリング調査を続けている。

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ヒアリの本当の怖さは経済的ダメージ