かつてはメールでややこしい頼み事をしたら「いまメールを送りましたが」と電話するのが常だった。病気になってからは「お体はいかがですか」と相手に気をつかわせるのが嫌で、かけなくなった。
向こうも電話を遠慮したせいか、仕事絡みでもらうメールにとげとげしさを感じることが出てきていた。
朝日新聞の記事で使用例を調べると、それまでの1年間で300本超がヒットした。政界きってのインテリとされた宮沢喜一元首相と高坂正堯・京大教授の対談本「美しい日本への挑戦」にも2人の「(笑)」が出てくる。思った以上に世間は笑いまくっていた。
ただ、その後はメールのやりとり自体が減ったこともあり、うやむやになった。
例の夢から数日後。そこに登場した先輩記者がSNSで彼の記事を紹介しているのに気がついた。一読して、もうちょっと書きようがあるだろうと思い、コメント欄で注文をつけた。
一緒に働いていたときに、ご自宅をうかがったこともある仲だ。多少、辛辣(しんらつ)なことを書いても許されると思ったが、今のところ注文への答えはない。
抗がん剤がそうであるように、強いものがいつでも、誰にでも効くとは限らない。
切迫感や使命感は、それに触れる人をしかめっ面にしがちだ。
それこそ「(笑)」でもおしりにくっつけておけばよかったのかもしれない。