「AKB48グループの人と接すると華やぎますし、気持ちが若くなる」(写真/植田真紗美)
「AKB48グループの人と接すると華やぎますし、気持ちが若くなる」(写真/植田真紗美)

 名司会者として定評のある徳光和夫さん。週刊朝日増刊「朝日脳活マガジン ハレやか 4月号」では、心筋梗塞という大病をする前と後での、心と体の変化と、健康の秘訣について語ってもらった。

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(17年前の心筋梗塞)術後に一番困ったのが「たばこはやめてください」という医師の言葉。僕にとってたばこは、嗜好品ではなくて必需品。くゆる煙を見ていると無になれる。そんなときにいいアイデアが浮かんできたりもしていた。「先生。吸っておいしいと、『今日もいけるな』というほど、たばこは健康のバロメーターなんです」と言うと、先生は「わかりました。では、次の検査のときには他の病院の紹介状を書きます」と。そこで初めて、衝撃を受けました。僕は「助かったんじゃない。先生方に助けられた」んだ。また心筋梗塞になって他の病院に担ぎ込まれたら、先生たちに大変失礼なことをする、と。

 でもね、やめた日から毎夜、たばこが夢に出てくるようになりました。火のついたたばこが空中に浮いて、目の前をゆっくりと通りすぎる。それを取ろうとするけれども、人さし指と中指からスルリと抜ける。取ろうと追いかける、取れない。で、目が覚める。睡眠不足の日々でした。だって、置いていないのに、朝起きると枕元にあるたばこを取ろうと手でまさぐっていましたから(笑い)。

 でも2週間ぐらいかな? パタッとこの夢を見なくなり、熟睡できるようになりました。僕はたばこはやめられないと思っていた。だからまず、「自分がやめられたこと」に驚いた。食事もおいしくなった。もっとうれしいのは声のスタミナがついたこと。40代から「声がかすれる」「出したい音が出せない」「この音じゃない」と悩んだりしました。でも禁煙してみると「あれ? 声が割といいトーンになっているな」。以前よりもスタミナがついたな、と実感するようになりました。

 術後は食生活を見直しました。病院の管理栄養士からかみさんがいろいろ聞いてきた。「魚卵はダメ」とかね。毎朝、かみさんが作ってくれる野菜サラダ。ひと皿で1日分の野菜が摂れる。結果、血液はさらさらになった。尿酸値や血糖値の数値もいい。徳光家のDNAが、やっとここから生かされるのかもしれないな。

■若い人たちの感覚を理解できる大人でいたい

 僕は運動はしない。仕事場から800メートル先にある麻雀店にタクシーで行っていたほど、歩くのも嫌。そんな僕でも、2011年の24時間テレビで63キロを走ることになったときは、集中して練習しました。だからもう、運動はいい。でもね、箱根駅伝を応援するのはライフワーク。若者が走る姿は美しい。できたら僕は、全選手に声をかけたい。8区は全区間の中で一番選手が変わりやすいのだそう。当日、走者の名前を聞いて、事前に書いていた選手の名前をペンで書き換える。耳で聞いたことを瞬時に手で書くことは、脳にとっていい体操かもしれません。

 いつまでも「若い人たちの感覚を理解できる大人」でいたい。長年培ったアナウンスメントを秋元康さんが評価してくれて、今でも「AKB48選抜総選挙」の司会をしています。AKB48グループの人と接すると華やぎますし、気持ちが若くなる。そういう意味では「若い人たちの邪魔にならないように、でも接していたい」が本音かな。今の若者によく言うのは、「今やっている仕事が苦しいとは思うな。仕事が苦しいのではなく、夢がないことが苦しいんだ」と。でも私自身に関してはもう、この年齢まで来ますと「一大事と申すは、今日ただ今の心なり」という老人の心境になる。だから僕は、今日の一日を精一杯つとめ励む。可能ならば、自分の葬儀の司会を自分でしたいぐらいでしょうか。「友人代表の弔辞としましてみのもんたさん、お願いします」とか(笑い)。周りが許さない場合は、草野仁さんに司会をお願いしようかな。僕より長生きすると思うしね。

(構成・文/長谷川拓美)

※週刊朝日増刊「朝日脳活マガジン ハレやか 2018年4月2日号」より抜粋