目黒:かなり難しい手術をお願いしようと、検査データなどを宅配便で送ると、天野先生から電話が来て、簡単に「はい、できますよ」と(笑)。そして、毎回、患者さんは決まった期間で元気になって帰ってくる。次第に信頼は増していきました。

天野:1年間で70例くらい目黒先生の紹介の患者さんを手術したと思います。

目黒 患者さんに、松戸まで行ってもらう理由を説明しやすくなっていきましたね。「私が自信を持ってお勧めできる心臓外科医は天野先生です」と。

天野:目黒先生がすごいのは、こっちが術後に手術報告を送りますよね。当時は、白紙の紙にサインペンで書いて、仙台にファクスを送っていましたが、深夜でもすぐに返事が返ってくる。「いったい、いつ寝ているんだろう? すごい人だな」と。あるときは返事とともに、次の手術依頼まで来ました(笑)。

目黒:すいすいと天野先生が手術してくれるんで、こちらもずいぶん助かりましたね。私が仙台厚生病院に移った後も、当初は心臓外科がなかったので、患者さんの紹介を続けました。

■「連戦連勝」のすごい心臓外科医

――おふたりの初対面はいつで、どんな印象でしたか。

天野:最初の紹介から2、3年後に学会で会いました。それまでのやりとりのとおり、言ったことをちゃんとやる人だなと。紹介状で手術の内容をこまかく指定してくる内科医もいますけど、目黒先生はそれとは対照的。こまかい指示はなく、患者さんとの出会いから、患者さんの将来をつくるためにこういう理由で手術が必要なんだということが書かれていました。いっしょに考えながら、患者さんとつきあっていける感じでした。

目黒:当時から天野先生は、卓越した手術をしていましたが、とにかく毎回、失敗がない。会ってからも連戦連勝のすごい心臓外科医という印象は変わりませんでした。

――おふたりには特殊な背景があったようですが、一般論として、外科医を本気にさせる紹介状はあるのでしょうか。

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