目黒:内科医が外科医に紹介状を書く上で大事なのは、いい検査をして、必要な情報を送ることです。そして、「手術をしたらよくなる」という必要性を見極めて患者さんを紹介することです。手術の必要がない症例や誰でも治せる症例を依頼されても外科医はモチベーションが上がらないでしょう。言葉のテクニックではなく、やりがいのある症例を「先生でないとダメなんです」という姿勢で送ることがコツではないでしょうか。
天野:外科医としても、内科医が「やりようがなくなったから」と放り出して送ってくる症例では、本気になれません。目黒先生からの紹介にはそれがなかったし、患者さんを思う気持ちがありましたね。
私のところに紹介状を書いてくる主治医には、「簡単でいい。ただ、飲んでいる薬はちゃんと書いてほしい」と伝えています(※注)。それとできれば、外科医の立場を考えた気遣いのある紹介状がいい。だから、字が汚くて読めないとか、情報の漏れはダメです。
――患者が「いい紹介状」を書いてもらうコツはありますか。
目黒:いい病院、いい医師を紹介してくれるのが「いい紹介状」です。そのような紹介状を書いてくれる医師に共通しているのは、問題が発生したとき、患者さんからお願いしたときに、すぐ、快く紹介状を書いてくれることです。その逆の対応をされた場合は、迅速に医師を替える、病院を替えるのが、「いい紹介状」を書いてもらうコツの一つです。
天野:患者さんは、紹介状を書いてもらいやすいよう日ごろからかかりつけ医と関係を築いておくことです。切迫して急にお願いするのはよくありません。そのためには、診察時に問題点を絞って無駄のない受診を心がけるなど、「いい患者」であるべきです。そして、紹介状を書いてもらったら、すぐに行動することです。
(※注)特にその当時は人工心肺を使用した冠動脈バイパス術の時代だったので、抗血小 板剤の服薬は手術日を決める重要な要素だった。
(構成/編集部・杉村 健)
天野篤(あまの・あつし)/1955年生まれ。医師・日本大学医学部卒。新東京病院には91~2001年に在籍。02年、順天堂大学医学部心臓血管外科教授。12年2月、天皇陛下の心臓バイパス手術の執刀医となる。16年、順天堂大学順天堂医院院長に就任。現在、仙台厚生病院の心臓血管センター長(非常勤)も兼務し、月1回同院で手術を実施
目黒泰一郎(めぐろ・たいいちろう)/1947年生まれ。医師。東北大学医学部卒。東北厚生年金病院循環器科医長、仙台社会保険病院(現JCHO仙台病院)循環器科部長などを経て、96年に仙台厚生病院に。2001年、同院院長兼心臓センター長。06年から理事長。心カテーテル治療の名医で、国内でいちはやく「橈とう骨こつ動脈」からカテーテルを通す方法を取り入れた