「欠席してよかった」という人の回答と比べると、やはり複雑な心境を語る回答が多く見られました。これだけ複雑な気持ちを抱えやすい「不登校からの卒業式」、どんなかたちが望ましいのでしょうか。
以前、ある保護者から寄せられた体験談で不登校経験者たちが「これはいい!」「マニュアル化されてほしい」と絶賛した「卒業式の神対応」がありました。そのケースをご紹介します。
■選びやすい環境で選択肢を提示
卒業式を控えた小学6年生のAくんは、ある日、学校のコーディネーターから連絡を受けました。卒業式に関して「選んでほしいことがある」ということで、Aくんは場所を指定し、親といっしょにコーディネーターと会いました。
コーディネーターが「選んでほしい」と言ったのは卒業式の参加のかたちです。それも4つのパターンが示されました。
(1)「ほかの生徒といっしょに卒業式に参加する」
(2)「ほかの不登校の生徒といっしょに別室卒業式に参加する」
(3)「ひとりで別室卒業式に参加する」
(4)「学校へは行かない」
ほかにも練習参加の有無など細かい選択肢もありましたが、Aくんは卒業式の直前まで悩み「一人で別室卒業式」を選びました。
Aくんは卒業式当日、別室で卒業式のようすを動画で見て、卒業証書を受けとりました。帰り道で「決着がついた感じがしてスッキリした」と親に語ったそうです。
この学校の対応が、なぜ絶賛を受けたのでしょうか。ポイントは「本人が選びやすい環境で選択肢を提示されたこと」です。
以前、ファミレスでメニュー選びに悩む子どもに母親が「早く選びなさい」と怒鳴りつける場面に遭遇しました。あれを「選択肢の提示」とは言いません。
コーディネーターはまず、Aくんに話しやすい環境を選んでもらいました。Aくんが気を遣う担任はその場面にいません。またAくんが悩める時間もギリギリまでとりました。これらのプロセスを通してAくんは「自分の気持ちがなによりも尊重されている」ときっと実感できたでしょう。