パネッタ国防長官(右)は日本と中国に「二枚舌」を使っているのか (c)朝日新聞社
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パネッタ国防長官(右)は日本と中国に「二枚舌」を使っているのか (c)朝日新聞社
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 米国のパネッタ国防長官は9月16日に来日し、「条約上の義務は守る。長年の方針に変わりはない」と、尖閣諸島が日米安保条約の対象になるという米国の立場を再確認した。その上で尖閣諸島の領有権を巡る対立でも、「特定の立場は取らない」と、従来の主張を繰り返した。
 
 2日後に中国の梁光烈(リャングアンリエ)国防相と会談した際にも、尖閣に安保が適用されるとの米政府の立場を伝達していたことがわかっている。
 
 いったい事の本質はどこにあるのか。元外務省国際情報局長の孫崎享さんが力を込めて語る。
 
「大事なことは、安保を適用したからといって、米軍が軍事的に介入するわけじゃないということです。日本の大半の人は、米軍に味方してもらえると考えているでしょうが、違うんです」
 
 孫崎さんの解説によれば、日米安保条約第5条が「日本国の施政の下にある領域」での武力攻撃について、米国が集団的自衛権を行使して、日本を防備する義務を負う根拠になっている。ただ同時に2005年の「日米同盟 未来のための変革と再編」では、
 
《日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼(とうしょ)部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する》と定める。島嶼部を守るのは日本自身の責任なのだ。
 
「ですから尖閣諸島付近で中国が攻めてきた場合、日本が守り切れればいいけど、守り切れないと、管轄地は中国側にいく。そうすると、安保条約の対象ではなくなるのです。しかも、そもそも米国は中国側に、『米中関係が最重要。その一環が軍事だ』と伝えています。従って、尖閣諸島を巡っての軍事衝突で、米国は絶対に日本を守らない。日本のために中国と事構えるようなことはしないのです」(孫崎さん)
 
※週刊朝日 2012年10月5日号