なかでも1994年度生まれは授業時間が大きく減った世代で、2011年度から授業時間を増やす目的で始まった「脱ゆとり教育」の影響も受けていない。つまり、羽生や高木は“ど真ん中”ゆとり世代なのだ。ちなみに1995年生まれには、陸上100メートルで日本人初となる9秒台を出した桐生祥秀、リオ五輪で銅メダルに輝き、日本のバドミントン史上初のシングルスでメダリストとなった奥原希望、バレーボール日本代表のエース・石川祐希らがいる。こういった選手も“ど真ん中”のゆとり世代だ。

 ゆとり世代については、「集団行動よりもプライベート優先」「コミュニケーションがとれない」などと批判されてきた。昨年4月、1994年度生まれの現役大学進学組が新社会人となったが、未知の新人に対して「ゆとり世代の再教育」が話題になったほどだった。

 2016年5月には、馳浩文部科学相(当時)が2020年度以降に導入する次の学習指導要領について、「『ゆとり教育』との決別宣言を明確にしておきたい」と述べたこともあった。教育政策のトップである文科相が「ゆとり教育は失敗」と結論づけたようなもので、インターネット上では「私たちゆとりは失敗作だったって烙印されてるみたい」「欠陥品ってことよな、すごいなそういうこと言われるの、SFかなにかか??」といった書き込みが相次いだ。

 それが今や、日本中がゆとり世代に熱狂している。かつて文部科学省に在職していた時代に、ゆとり教育の導入に関わった寺脇研・京都造形芸術大教授は言う。

「いわゆる『ゆとり教育』が目指したものは、個人の尊厳を尊重するということ。それは、子供の頃から好きなことに取り組み、主体的に考え、自ら学ぶ人間を育てる。羽生選手や大谷選手はそういった教育を受けてきた世代で、彼らの言葉を聞いていると、10代の頃からしっかりとした『自分』があり、ケガや逆境を乗り越える力も持っている。『ゆとり教育は失敗だった』という批判は先入観によるもので、根拠はないんです」

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「ゆとり世代」を強くしたのはこの制度?