大舞台で最高の演技が期待される坂本花織(写真・Getty images)
大舞台で最高の演技が期待される坂本花織(写真・Getty images)
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 フィギュアスケート女子シングルは、近年ロシア勢が圧倒的な力を見せている。平昌五輪の団体戦でも、ショートプログラムではエフゲニア・メドベデワ(個人資格=ロシア)が、フリーではアリーナ・ザギトワ(個人資格=ロシア)がその強さを見せつけた。現時点での女子の一番難しいジャンプはトリプルアクセルだが、プログラムに入れるのはリスクも伴う。ロシアのトップ2が跳ぶ最高難度のジャンプは3回転―3回転で、ジャンプの基礎点が1.1倍になる後半に集中的に組み込み、時には手を上げながら飛距離を出して跳ぶことで出来栄え点を上げる戦術をとる。なおかつ、スケーティングや表現面も鍛え上げられているロシアの二人は、演技構成点でも9点台の数字を並べてくる。

 昨季の大きなケガから見事な復活を果たし、ソチ五輪ではかなわなかった大舞台への出場を決めた日本のエース・宮原知子は、ジャンプが跳べない時期も端正なスケーティングにさらに磨きをかけ、ショート『SAYURI』の原作を読むなどして表現面での努力も積んできた。今季のグランプリファイナルでは5位だったが、ショート・フリーとも優勝したザギトワよりも高い演技構成点を出している。転倒などの大きなミスが少ないことも、大舞台では宮原の武器となるだろう。課題は団体戦・ショートでもとられてしまったジャンプの回転不足だが、過度に気にせず、持ち前の美しい所作で日本人女性のたおやかさを演じ切ってほしい。

 シニアデビューを果たした今季急成長し、平昌五輪代表の座を勝ち取った坂本花織は、技術面でロシア勢に対抗できる力を持っている。アピールポイントを問われた坂本自身が「ジャンプの幅」と答えているように、武器は高くて飛距離があるジャンプだ。昨季のジュニアグランプリファイナル・世界ジュニア選手権で3位となり、両大会で優勝したザギトワと表彰台で並んでいる坂本は、今季のショートプログラムではジャンプをすべて後半に入れている。

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坂本は持ち味を出せば上位争いにも