■知力と瞬発力
戦国武将として成功するには、高い知能と優れた状況判断は必須である。2005年英国の心理学者Dearyらは、56歳の時の知能指数(IQ)が高いと、16年後すなわち72歳の時に生きている確率が高いという結果を報告した。以前から、子どもの時のIQと寿命が相関するという報告はあったが、中高年における研究はこの論文が最初である。
また、知能検査と同時に、刺激に対する反応時間を測定したところ、これが短いほど長生きし、IQよりも相関が高いということが分かった。一般に年をとると、物事をじっくり考えて結論付けると思われているが、複雑な論理能力よりも短時間に物事を判断して的確に対処する能力が中高年で保たれていることが重要であり、高等教育を受けていることも長寿と相関するという結論であった。
実際、早雲は室町幕府の武家貴族として当時の大学ともいうべき禅寺で教育を受けており、家臣への書状や子孫への家訓を見ても、自分の名前もろくに書けなかった他の戦国武将たちとは一線を画している。
ただ、最近になって早雲の生年を1456(康正2)年とする説が提唱されている。これでは1487年の駿河下向が32歳、伊豆の国を支配したのが42歳、没年が64歳となり、戦国武将の一般的なライフスパンに一致する。真相解明は今後の検証を待つしかないが、早雲の三男で箱根湯本の早雲寺院主、箱根権現別当となった北条長綱(幻庵)は97歳の最晩年まで一族の長老として重きをなしており、北条家に長生きの遺伝子があったことは間違いない。
早川智
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