(※写真はイメージ)
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 東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。そのような中、現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、教授会の人事について提言する。

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 医局では教授に権限が集中します。誰に手術をさせるか、どこの病院に異動させるかは教授に決定権があります。

 大学病院の中で、医局はある意味独立した存在です。病院長や医学部長が、医局の教授たちに指示・命令しているかというと、全く違います。病院長は、教授や医局員の人事権を持たず、リーダーより調整役に近い存在です。

 国立大学病院はトップダウン型のまとまった組織ではなく、独立した医局の集合体です。病院長が命令したからといって、動きません。文科省や厚労省に一定の影響力はありますが、「学問の自治」のため、よほどの不祥事がない限り介入できません。

 国立大学病院の意思決定は、最高意思決定機関である教授会での議論を通じて行われます。教授会は、教授ないし准教授によって構成されます。オーナー家の権限が強い私大医学部や、厚労省の権限が強い国立病院とは対照的です。

 教授人事は教授会の専権事項であり、構成員による選挙で決まります。多数派工作と「政治」の世界です。

■教授会人事の腐敗を是正せよ

 多くの国立大学では、教授人事を、実質的には数名で構成される選考委員会が決めています。選考委員を決めるのは一部の有力教授です。民主的に見える教授会も、たいていは有力教授が仕切ります。教授人事は密室で決まるのです。教授昇進を望む准教授は、彼らに媚びざるを得ません。

 教授選考にあたっては、臨床・教育・研究能力に加え、人格を評価することになっています。これは、あくまで建前です。ある国立大学名誉教授は「教授選では、候補の能力より、好き嫌いで決める傾向がある。自分より有能な人物が選ばれそうになれば、怪文書を流す連中までいる」と言います。このため、教授に相応しくない人物が、しばしば教授会内の「政治のあや」で教授に選ばれることがあります。

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教授会が機能するようになるためには