背景には先生の勤務状況が過重労働であるとか、公教育全体が閉ざされているなどの指摘も聞いています。
でも、もっと学校という場はよくなるし、よりよいかたちを考えられるのではないかと思っています。
――“公教育の場を整備したい”という夢を持つ直接のきっかけはなんだったのでしょうか?
中学校で別室登校をしていたことと修学旅行がきっかけでした。
■教室に入れなくても 自分のペースでいい
中学には教室へ入れない人用の教室が用意されています。その教室に通うことを「別室登校」と言いますが、私も別室登校をしていました。
この別室の先生たちがすごくいい方々だったんです。小学校では「とにかく教室へ戻りさえすればいい」という対応でしたが、別室の先生たちは自分の意見を押し付けず、私の気持ちを一番に考えてくれました。
具体的には、私に無理のない時間帯で時間割を組んでくれたり、学ぶ内容も複数の選択肢を用意してくれました。
別室に通うまでは「教室に入れない自分は、なんてダメなんだ」と思っていました。いつも下を向いていたような気がします。でも気持ちが受けとめられることで「いまの自分でもいいんだ」と思えるようになりました。それからは前向きな気持ちになっていき、中学2年生からは教室へ戻っています。
そんななかで沖縄への修学旅行がありました。沖縄ですから、私としては戦争のことを勉強したいと思っていましたが、修学旅行はとにかく「スケジュール優先」なんですね。
修学旅行中、戦争当時の写真が展示された資料館に入ったとき、同級生たちは、お化け屋敷に入るような感じだったんです。なんていうか、ちょっとふざけた感じというか、少なくとも「学ぼう」という感じには私からは見えませんでした。でも、そういう同級生に対して先生たちが一番気にしているのはスケジュールです。生徒がなにを感じ、学んだのかよりも、いかに生徒が時間どおりに食事をすませ、目的地へ移動し、黙って話を聞き、アンケートを書いたか。