高齢者ホームの選択肢が多様化するなか、老後の安心を左右するようなさまざまな課題・トピックも浮上している。昨年1月には、2016年に倒産した老人福祉や介護関連事業者は108件に上り、過去最多を更新したことが報じられた。発売中の週刊朝日ムック「高齢者ホーム 2018 プロに教わるやすらぎの選びかた」では、その背景を解説している。ホーム選びの参考にしてほしい。
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厚生労働省の介護事業経営概況調査によれば、介護付き有料老人ホームのうち2015年度決算で収支差率が0%以下(赤字)のケースは約3割にのぼる。報酬引き下げも大きな要因だが、体調悪化リスクや運動機能の低下で、転倒などのリスクが高い入居者が増えている状況もある。いったん長期入院となれば、少なくともその間の介護報酬はストップして収益悪化につながりやすい。
収益悪化のリスクをおかしてまで、なぜ長期入院リスクのある人などを受け入れざるをえないのか。一つはそうしたニーズ自体が高まっていること。もう一つは、15年度の報酬改定で「基本となる報酬」が全体のマイナス2.27%よりもさらに引き下げられ、報酬額が相対的に高くなる要介護度の重い人などを積極的に受けざるをえなくなったからだ。
■入居先選びは財務諸表のチェックを
ホーム全体の収益が悪化しているとなれば、入居希望者としては、「入居後にホームが倒産したらどうしよう」と不安になるのは当然のことだ。
有料老人ホームに対しては、入居者が支払った前払い金の保全措置が法的に義務づけられている。これまでは、ホームの設置時期によって法的義務の範囲外となるケースもあったが、17年の法改正によって一律に義務づけられることになった。