ただし、トラウトの凄みはホームランを量産する長打力だけにあるのではない。むしろ本塁打はコンスタントにヒットを重ねた延長上にあるオマケと言っても過言ではない。常に3割前後の打率をマークする割に三振も多いトラウトではあるが、リーグ最多四球を2回記録しているように選球眼は抜群。ここ2年は出塁率でリーグトップに名を連ね、好打者の証とされるOPSも昨季は52本塁打を放ったアーロン・ジャッジ(ヤンキース)よりも上(1.071)だった。

 そして、トラウトは守備でも非常に貢献度が高い選手として名を馳せている。俊足を生かした広い守備範囲もさることながら、フェンス際での感覚が超一級で、ホームランをもぎ取るスーパーキャッチはトラウトの十八番と言っていい。こうした攻守にわたる活躍はチームの勝利にも当然つながっており、最近のセイバーメトリクスで特に高く評価されるようになったWARではレギュラーに定着した2012年から2016年まで5年連続でア・リーグトップ。特に2012年は三冠王カブレラよりもトラウトの方がWARで上回っていたことから、トラウトにMVP投票した記者もいたほどだった。

 だが、万能なスーパースターとして活躍してきたトラウトにも、まだ証明できていないことがある。それはポストシーズンでの強さ。トラウトの台頭とエンゼルスの過渡期が重なったこともあり、キャリア7年間でトラウトは1シーズンしかポストシーズンを経験できていない。その唯一の機会だった2014年もエンゼルスはロイヤルズに3連敗を喫し、トラウトは15打席でソロアーチ1本を放ったのみだった。それゆえに今後も長くエンゼルスの屋台骨を支えるであろう大谷の加入は、2020年までエンゼルスとの契約を残すトラウトにとってもこの上ない朗報に違いない。トラウトと大谷、日米の若きスーパースターの共演がメジャーリーグの舞台でどういった化学反応を示すのか。1試合たりとも見逃せないシーズンが始まる。