


撮影歴は70年近く。鉄道写真界の草分け的存在にして今も現役を続ける「鉄道写真の神様」こと広田尚敬さん(82)の企画展「Fの時代」が、東京・品川のニコンミュージアムで開かれている。
ニコン初の一眼レフカメラ「ニコンF」により主に1960年代に撮影されたモノクロ写真60点以上を掲示。雪の函館線を驀進するC62を正面からとらえた広田さんの代名詞的作品も展示されている。また、広田さんの愛機のほか、この展示会のために広田さんが新たに撮影した作品、自作の解説や鉄道写真への思いを語ったムービーも上映されている。1月13日には同ミュージアムで鉄道写真家の上島幸隆さんを迎え、トークライブも開かれた。
1935年東京都生まれ、1歳の時から「都電を見ると泣き止んだ」という筋金入りの鉄道ファンの広田さん。中学3年の時から鉄道写真の世界に飛び込み、親戚から譲り受けたニコンFなどで作品を撮りため1968年に初の個展「蒸気機関車たち」を東京・富士フォトサロンで開催。作品を見て開催を即決したという当時の館長(大場栄一氏)は「富士フォトサロン始まって以来の盛況」と喜んでくれたという。
その作風は「ヒューマニティーに富む」と称される。鉄道の主役である車両だけでなく、運転士や駅員、切符売り場の職員、乗客など鉄道にまつわる「人」を撮ってきた。
「鉄道は人がいなくては成り立たない。人が写っていなくても、どこかそこに人の雰囲気が出るように撮影してきました」(広田さん)