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病気で福島を後にして半年近くたったころ、休日にその地を訪れた。
気になっていた被災地の何カ所かをレンタカーで回り、あいさつできないまま別れていた知り合いに会った。
地元紙勤務の彼は、福島産品の風評被害の話題を持ち出しつつ、前向きな話をいくつかしてくれた。まさに「それでも」だ。そして最後に「野上さん、福島のサポーターになってください」と言った。
当たり前だと思っていた日常が断ち切られる辛さを、病身の今ならばもっと理解できる。当時わかっていれば紙面でよりサポートできたかもしれないとも思うが、去った日々は戻らない。
「それでも」が深く自身に刻まれたのはもう一つ、この病気のことがある。
福島での日々が、この言葉を通して自分自身を鼓舞してくれている。そんな気がしてならない。