酒で肝臓がどれくらい酷使されているかを把握するバロメーターになる「γ(ガンマ)-GTP」。横浜市立大病院消化器内科の米田正人医師によれば、この値が79を超えると「要注意」で脂肪肝の疑いがある。150を超えると重篤な肝障害が疑われ、精密検査や治療が必要になってくる。
肝臓を傷つけない酒量として、厚生労働省は、1日平均純アルコール量で20グラムまで(女性はその3分の2)を適度な飲酒量としている。これはビールなら中瓶(500ミリリットル)1本、日本酒なら1合。しかし、「この基準はあまりに非現実的だ」という指摘に同意する左党は多いのではないか。でも大丈夫。日大板橋病院消化器・肝臓内科の松岡俊一准教授はなんと、こんなことを言っているのだ。
「本人の適量を超えて飲みすぎなければ、酒を過度に恐れる必要はありません。γ-GTPの数値は、あくまで飲酒量をはかる目安のひとつに過ぎないからです。それよりも気にすべきは肥満です。脂肪肝の人は太っていることが多いので、標準体重に落としてメタボリックシンドロームを改善すれば、γ-GTPも連動して下がり、肝臓は健康な状態を取り戻します」
酒を飲む場合は、酒でカロリー摂取した分、おつまみや食事のカロリーを減らせばいいというのだ。ただし、食事を取らずに酒だけを飲むのは、酒量が増えがちなのでタブーだという。
松岡氏自身もほぼ毎日、ウイスキーのダブルを3杯、または焼酎のウーロン茶割りを5杯程度飲んでいる。厚労省が定める酒量よりかなり多いが、定期健診の結果は常に正常だという。
「私は標準体重をキープしているので、これぐらいの酒量であれば脂肪肝にはならないんです。もちろん、カロリーの高いビールや日本酒は避け、蒸留酒を飲むようにするなどそれなりに気は使っています。蒸留酒のなかでは、芋焼酎より麦焼酎のほうが脂肪肝になりにくいという研究結果があるので、焼酎なら麦がおすすめですよ」(松岡氏)
※週刊朝日 2012年9月28日号