●注連飾りを掛けてよい場所
玄関には、注連飾りがかけられる。もともとは神社などでよく見る注連縄から派生したものであるが、この先は清浄な地であることを示すものである。社殿や神木などに注連縄がかけられるのは、「この先は神さまのいる場所」という意味なのだ。これを家屋の玄関にかけるということは、この先は清らかな場所であることを神さまに知らせているわけで、つまり、大掃除とセットだということになる。
日頃キレイにしているから大掃除はしない、という人も多くなったが、お寺などでよく聞く「煤払い」は、単にキレイにするためだけでなく、「清浄にする」ための作業なのである。「煤払い」をせずに注連飾りをつけるのは、無礼なことなのだ。
●家で神さまがいる場所は
そして、家屋に入ってきた神さまがどこに住まうかといえば、「鏡餅」の中なのである。
ご存知の方も多いと思うが、神社には丸い鏡が祭られている。鏡は神さまの依り代(宿る場所)であり、これを模したのが鏡餅なのだ。
家屋へやってきた神さまは、人々に「年」と「魂」を与える。昔、数え年と言ってお正月が来るとひとつ年をとるとされていたのは、神さまが「年」を持ってきた、と考えられていたためでもある。「魂」とは生きる力であり、これを人に渡す時「お年魂(玉)」となるのである。
そして、神さまの宿った食べ物、鏡餅をみんなでいただくことで、パワーを得られると考えられてきたのである。つまり、飾ったお餅は必ず食べること、これがお正月の締めくくりとなる。
ところで、こんなに大々的な神さまでありながら、全国的にみても祭られている神社はかなり珍しい。
全国の年神を祭る総本社は奈良県の葛木御歳(かつらぎみとし)神社と言われているが、歴史の浅い東京都内にはほとんど見られない神さまである。年神が祭神として本殿に鎮座していることは、とても長い歴史を持つお社か、逆に明治以降に創建された比較的新しいお宮である確率が高い。それでも、今なお、お迎えの儀式だけは、しっかりと根付いている不思議な神さまなのである。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)