横綱・日馬富士が起こした暴行事件に角界に衝撃が走っている。日馬富士は10月の秋巡業中に開かれた宴席で、平幕の貴ノ岩の頭部をビール瓶で殴り、さらに顔を繰り返し平手打ちして重傷を負わせていたことが14日に明らかになった。貴ノ岩は九州場所を初日から休場している。
世間を驚かせたのは、13日に日本相撲協会に提出された貴ノ岩の診断書だ。暴行があったのは26日未明で、診断書には「(1)脳しんとう、(2)前頭部裂傷、(3)右外耳道炎、(4)右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」と書かれていた。
症状が安定すれば場所中の復帰の可能性もあるとのことだが、とても軽症とは思えない。特に「右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」は、貴ノ岩の力士生命を左右しかねないケガだ。
外傷や交通事故が原因で起きた髄液漏は、「脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう)」を引き起こす可能性がある。脳の中の髄液が減ると、髄液によって浮いている脳が下がり、神経などを圧迫する。それにより、激しい頭痛、吐き気、しびれ、歩行困難などの症状が出る。
現在、日本では約1万人の患者がいると推計されている。ただ、外傷が消えても症状が長期間残るため、周囲から「あの人は怠け者だ」などと誤解されることも多い。家族や知人から病気として認識されないため、つらい日常生活を送っている患者もいる。貴ノ岩も、暴行事件後は巡業に参加していたが、からだにしびれなどを感じ、事件から10日後の11月5日になってから福岡市内の病院に入院したという。
脳脊髄液減少症とは、いったいどんな病気なのか。
* * *
兵庫県在住の主婦、下村良子さん(仮名・30歳)は2013年2月、車を運転中に、追突事故に遭った。
事故後、頭痛や腰痛、吐き気、ふらつき、視覚の異常、耳鳴りといった症状が表れたため、近所の病院へ行ったところ、追突によるむちうち症と診断された。経過を見ることになったが、その後も一向に症状が改善しないため、再度、医師に相談した。すると、「脳脊髄液減少症」という病気かもしれないと言われた。