菅長官がこうした対応に終始するのは、先制攻撃の可能性を認めて、さらに被害想定を公表すれば、その大きさに驚いて、一気に国民の反戦ムードが高まるということがわっているからだと思われる。

■トランプ「武士の国発言」の本当の意味とは?

 こうした中、11月5日にトランプ大統領の「武士の国」発言が報道された。東京新聞が引用したワシントン発共同の記事によれば、北朝鮮が8~9月に日本列島上空を通過する弾道ミサイルを発射した際、日本が破壊措置を取らなかったことについて、トランプ米大統領が東南アジア諸国の複数の首脳に「迎撃するべきだった」「武士の国なのに理解できない」などと、不満を口にしていたということだ。

 日本が上空を通過する北のミサイルを迎撃すれば、北朝鮮に対する武力行使になり、それをきっかけに北朝鮮が日本に反撃することになるだろう。そうなれば、米国は「日本を守るための自衛戦争だ」と称して堂々と北朝鮮を攻撃できる。これで、国際的な批判はかなり抑えることができるし、米朝戦争に反対する韓国も批判しにくくなるだろう。

 しかし、トランプ大統領の思惑はそれだけにとどまらないと見るべきだ。

「日本のための戦争」だということにできれば、米軍よりも、まず、日本の自衛隊を最前線に送るべきだということになる。前述した大規模な地上侵攻のケースでは多大な犠牲が予想されるが、米国兵に代わって日本の自衛隊員が死んでくれれば、米国にとって好都合だ。特に、国内で支持率低下に喘いでいるトランプ大統領にとっては、大きな助けになるだろう。

「日本のための戦争」は、さらに大きなツケを日本にもたらす。戦争費用は「日本持ち」ということになるのは必至だ。武器を買うだけでは済まない。米軍のあらゆる戦争費用まで日本に持たせようということなのだ。

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