この問題を理解するためには、まず、日本の見本市会場について知っておくことが必要だ。見本市を開くには、当然のことながらそのための会場が必要になる。どんなに需要があり人気があっても、会場がなければ見本市は開けない。また、ある見本市への需要が高まり、規模が急速に拡大しても、会場に限界があれば、そこでその見本市の成長は止まる。その意味で、大規模な見本市会場の存在は、日本の見本市産業発展のために必須の条件である。

 日本政府は、観光立国を掲げ、カジノを含む統合型リゾート創設に力を入れている。カジノばかりが注目されているが、政府は、大規模な国際見本市が開催されれば大きな経済効果が生まれるとして、見本市産業の振興にも熱心だ。

 しかし、この分野での国際競争は激しい。そこでの競争に勝ち残るには、最低限、諸外国の見本市会場に引けをとらない立派な会場を持っていなければならないのだが、実は、日本の現状は極めて寂しい状況だ。

 世界一の見本市会場は、2015年時点での比較だが、ドイツのハノーバーで、面積は何と46.6万平方メートル。2位が上海で40.3万平方メートル、以下、3位フランクフルト36.7万平方メートル、4位ミラノ34.5万平方メートル、5位広州33.8万平方メートル、6位昆明31.0万平方メートルと続く。これに比べ、日本最大の東京ビッグサイトは、わずか8万平方メートルで世界73位(現在は10万平方メートル弱に拡大しているが、他の都市も拡大しているので現時点での正確な順位は不明)。ハノーバーや上海の5分の1以下である。また、世界各国の見本市会場の総面積で見ても、アメリカ671万平方メートル、中国516万平方メートル、ドイツ341万平方メートル、イタリア223万平方メートル、フランス209万平方メートル、スペイン155万平方メートルなどに比べて日本はわずか35万平方メートルとけた違いに少ない(以上2015年の数字)。世界第3位の経済大国とはとても思えない水準である。

 面積が小さければ、当然、開催される見本市の数も規模も小さくなり、見本市産業も成長できない。冒頭に紹介したコミケは、東京ビッグサイトの面積が狭いこともあって、急速に規模が拡大した後、成長は頭打ちとなってしまった。ビッグサイトを全館使っても収容できない数の参加希望者がいるのに、面積が足りないから仕方なく断っているという。

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