今年の夏、西東京大会では二つ勝ち、3回戦で東海大菅生高校とあたって2対3と惜敗した。勝った東海大菅生は決勝であの清宮幸太郎(日本ハム1位指名)を擁する早稲田実業を破って甲子園に出場した強豪校だ。西東京大会で東海大菅生を3点以下に抑えたのは桐朋だけである。甲子園は決して夢物語ではない。

 現在、桐朋の野球部員は29人(引退した3年生除く)。練習は午後3時40分から6時すぎまで。月、木曜日は練習が休みだが、部員は朝、昼に自主トレを欠かさない。土、日曜日は自校のグラウンドで、あるいは遠征して練習試合を行い、関東一、日大鶴ケ丘、岩倉といった甲子園出場経験もある強豪校と対戦している。

 野球部監督の田中隆文さんに話をきいた。

「甲子園を本気でめざし、365日、野球も勉強もやろう、というのがスローガンです。野球の練習での忍耐力や集中力、これを勉強にも通じさせているようです」

 なぜ、東京大野球部員に桐朋出身者が6人もいるのか。田中さんには心あたりがあった。

 2011年に東京大に現役合格した野球部のエース、初馬真人さんの存在である。彼の代(2010年)では西東京大会ベスト16に残る好成績をおさめている。初馬さんは東京大野球部でも活躍した。

「偉大なる先輩を見習って東京大で野球をやろうという機運が高まり、それがいまに続いているのでしょう。授業を無駄にせず、空いている時間を見つけてコツコツ勉強する。野球を理由に勉強ができないのがいやだったんでしょうね」

 慶應義塾大入学後、仮面浪人で東京大に合格した部員もいるぐらいだ。

 地元で野球も勉強もできる小学生、中学生が受験のために桐朋を見学したとき、野球部専用グラウンドを見て感動するという。「文武一道」を貫き、「挑戦、甲子園」を果たす日が来るかもしれない。

 ほかにも、東京大野球部員の出身校で気になる学校がある。たとえば栄光学園高校には硬式野球部がない。軟式野球部があり、これがやたら強い。全国大会の出場経験もある。軟球を硬球に持ちかえて東京大で活躍するOBたちに、栄光学園軟式野球部員は大いに励まされるという。

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