そしてそのプロデューサーにお会いしたときに思ったんです。「今話しているこの目の前の相手を信じられないとしたら、私はもう一生人を信じられない人間で終わる」と。ギリギリまでクランクインも延ばしてくださるとまで言っていただき、「あ、今の気持ちに従いこの人を信じて、見切り発車してみよう」と決断しました。
始まってみたら、スタッフもキャストの皆さんも一丸となって「私たちが守る!」という気持ちで接してくださった。そのやさしさが染みました。仕事場というのは、本当にありがたいものだなと痛感しながら、一枚一枚心の薄皮を剥ぐように、一歩ずつ前に進むことができた、そんな現場でした。
――あれから数カ月。しかし、どん底まで落ちたという南さんは、今はハツラツとした、はじけるような笑顔で私たちの前に帰ってきた。何かすべてをそぎ落としたような軽やかさがその姿からは感じられる。どうしてこんなふうにいられるのだろうか。
南さん:それはきっと、自分の人生を見つめ直すチャンスをもらっているからだと思います。たぶんはたから見ると、気の毒だとか可哀想だとか思われているかもしれないけれど、でも私の気持ちとしてはそうではなくて、こういう局面だからこそ、今まで考えないで済ませていたことを見つめ直そうというエネルギーが湧いてきている。なので、このチャンスを生かさなかったらもったいないと思うんですね。