ある程度文句を言えるテレビって、それはそれで健全かもしれないと思う一方で、クレームとかスポンサーに文句を言って世の中を動かしてやろうって考えている人がいる。厄介な世界になってきたなと思うのは、苦情にその人の利益が乗っかってることがあるんですよね。自分がやっている活動に反することをテレビがやっていたら、「人権侵害です」「◯◯団体が怒ってます」ってクレームを入れる。でもその人がそういう活動をやってるってことは、テレビ局側からは見えにくいんですよ。隠されていることもあるし。

 作り手も人権侵害とか何とか団体って聞くとビックリして、表面的なクレームに表面的な対応をしてしまう。「こいつは番組から降ろします」とか、出演者に「コメントに気をつけてください」って規制したり……ってなってくると思うんですよね。

 いまは特に規制されることはないですけど、何となく両者気をつけてやることはあります。公平性っていう意味でね。だけど、バラエティータレントを使ってるんだったら、もっとお茶の間で見てるように好きなことを言わせても面白いと思うんですよね。そういうところは、作り手も悩んでいる途中だと思うんです。

 テレビ以外のメディアもそうだと思うんですが、「わかりやすく時代」になってきている。もしかしたら学校教育も。すべてがみんなにわかるように、格差を生まないようにっていう時代ですよね。

 昔、僕らが子どものときに見ていた情報番組って容疑者を引っ張り出したり、その親にいきなりマイクを向けたり、浮気で別れそうな夫婦をスタジオに引っ張り出して、すりガラスで隠して言い合いさせたり、いまで言うと品のないことをいっぱいやってたわけですよ。いきなり芸能人の家に行ってピンポン押したりとか。それに比べると、いまは「ソフトに、ソフトに」。今後のメディアを考えたときも、いまの番組作りはターニングポイントになっていると思うんですよね。

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