「でも、いい味出てますよ」

 そんな会話を交わしながら、シャッターを切り続ける渡辺さん。とにかく素早い。嵐山さんは、かねて渡辺さんのポートレートを見て「うまいなぁ」と思っていたという。

「撮影させる人をリラックスさせて、いい雰囲気で撮るところが“達人の域”だね」(嵐山さん)

 涼やかな水色の麻の浴衣を身につけた南さんは、旅先の中国で買い集めた約20の陶磁製人形の中から、香港で見つけたものを選んできた。

「ちゃんとちんちんがありますね」

と人形を見て切り込んできたのは渡辺さん。下ネタは得意とするところという。

「下ネタは年齢関係なく、みんなを笑顔にするからね」(渡辺さん)

 南さんも下ネタに軽く応酬。

「これ、けっこう細かいところまで作り込んである。今までちんちん触ったことはなかったけど、とがっててけがしそうだな(笑)」(南さん)

■わずか10分で自然な笑顔を引き出す

 撮影自体はいたってシンプル。ライティングは基本的に1灯で、白かグレーの背景を使う。手持ちでカメラを構えて撮る。撮影はわずか10分。

「相手が誰だろうと撮り方は同じ。素人さんは撮られ慣れていないから、自分からは動けない。だから僕がどんどん動く。宝物にも手助けしてもらって、その人の笑顔を引き出せたらすっと楽になる」(渡辺さん)

 撮影後、二人はすぐにパソコンで写真をチェック。短時間の撮影だったが、そこには二人の豊かな表情が何枚も並んでいた。最後に撮った2ショットには、長年の付き合いである、二人の親密さがにじみ出ていた。

「仲のいい友人と撮影するのもコツかも。伸坊とは50年間仕事をしているけど、こんなに“いい感じ”の写真ははじめて」(嵐山さん)

 撮影後、渡辺さんは全員に「3年後、また撮るからね」と声をかけている。そのときは、前に撮った写真を手に持ってもらって撮影することにしている。3年前と現在の変化が一目瞭然だからだ。

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